サントリー、優良子会社の“異例でユニークな”上場の狙いと舞台裏…懸念の声も【調理食品・加工食品コンサルタント日記】
“やってみなはれ”という企業のスタンスや私企業の経営の自由度を守りつつ、
直接金融市場から資金調達できる方法はないか。
そのひとつの回答が優良子会社の上場なのですね。
とはいえ、ここに挙がっているように、
この上場が利益追求は二の次で粘り強く頑張り続け、
数多くの成果を生み出してきた歴史と、少し逆行する向きもあるかもしれません。
そこをどう超克していくか、ますます目が話せませんね。
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サントリー、優良子会社の“異例でユニークな”上場の狙いと舞台裏…懸念の声も
http://biz-journal.jp/2013/07/post_2419.html
サントリーホールディングス(HD)といえば私企業の代表格。株式非上場が社是のような会社だ。そのサントリーHDが来る7月3日に、子会社のサントリー食品インターナショナルの株式を東証1部に上場する。
6月24日に決まった公募・売り出し価格は3100円で、上場時の時価総額は約1兆円に上り、食品業界3位のアサヒグループHDの約1兆2000億円に迫る。また昨年9月、国内最高額で東証1部に再上場した日本航空の上場時時価総額約7000億円も軽く超える。
株式市場では「今年最大の大型上場案件。業績も好調なので国内外から資金が集まり、市場が活性化する」(大手証券)など歓迎ムードが強い。
サントリー食品の上場はもちろん、直接金融市場からの資金調達が目的。そのサントリーHDが資金繰りに困っているわけではない。11年12月期まで7期連続で増収・増益を達成するなど、業績は堅調に推移しているからだ。
今回の上場の舞台裏を見ると、グローバル時代における私企業のしたたかな生き残り策が見えてくる。
●ままならぬ私企業の資金調達
サントリー食品の発表によると、募集株式数は9300万株。このうち、3350万株が国内募集、5950万株(全株の約64%)が海外募集。これに親会社のサントリーHDのサントリー食品株国内売り出し分2600万株が加わる。募集期間は6月25日から28日まで。なお、上場後のサントリーHDのサントリー食品持ち株比率は約60%になるとみられている。
発行価格1株3100円を基にした資金調達額はサントリー食品募集分2883億円、サントリーHDの売り出し分806億円の計3689億円。
サントリーHDは、このうち約3378億円を金融機関からの短期借入金(過去に実施した企業買収金用)の返済に充て、残りを今後の海外企業買収などの戦略投資に充てる模様。
「株式非上場が社是」とまで言われたサントリーHDが、それを自ら破るように株式上場の本格的な検討を始めたのは2008年といわれる。キリンHDが豪州乳業大手・デアリーファーマーズを約840億円(当時)で買収した時期と重なる。
当時のサントリー株式会社も08年にニュージーランドの清涼飲料大手・フルコアグループを約750億円(当時)で買収。翌09年も、持ち株会社に移行したサントリーHDが仏清涼飲料大手・オランジーナ・シュウェップスを約3000億円で買収している。
証券大手関係者によると、サントリーHDは11年も仏清涼飲料大手・ダノンのミネラルウォーター事業買収に動いたが、この時は資金不足で買収を断念したという。
海外事業の拡大につれ、従来の社債発行や銀行借り入れでは資金調達がままならなくなったのだ。
●私企業の自由さと資金調達難のジレンマ
こうした経緯から、サントリーHDの佐治信忠会長兼社長は、ついに株式上場を決意したといわれている。
その結果、サントリー食品の株式上場が決まったが、この上場計画が明らかになった当初、株式市場関係者の間では「なぜHDではなく食品なんだ」と、驚きの声が上がった。
市場では「親会社は上場するが子会社は上場しない」が半ば常識だからだ。実際、東証で「親会社が非上場で子会社が上場」のケースはわずか24件。全体の約1%にすぎない。しかも、その大半は時価総額が100億円未満。サントリーHDのような大企業のケースは極めて異例といえる。
この型破りな上場計画は「ユニークなサントリーらしい」(市場関係者)といえばそれまでだが、そこには「サントリーらしい私企業の生き残り策がある」(業界関係者)と見るのが的確なようだ。
つまり「私企業の経営の自由度を守りつつ、直接金融市場から資金調達できる方法はないか」と考え、導き出した解がサントリー食品の上場といえる。
サントリーHDの株式の約90%は、創業家(鳥井家と佐治家)が保有している。もし、親会社のサントリーHDが上場すれば、創業家が保有株の一部を市場に放出するか新株を発行するかになり、いずれの場合も創業家の持ち株比率が下がってしまう。創業家の支配力を保持するためには、サントリーHDの上場ははなからあり得ない相談だった。
ではサントリー食品と並ぶ中核子会社の「サントリー酒類」が上場対象にならなかったのかとの疑問が浮かぶが、それは「祖業を担う子会社」であることから除外されたようだ。
サントリーHDの祖業であるウイスキー醸造は、原料仕込みから出荷まで10年以上の歳月を要する。したがって「四半期単位で業績が問われる昨今に、サントリー酒類の上場は問題外」(サントリーHD関係者)になる。
63年に参入したビール事業が初めて黒字になったのは、参入から46年目の08年12月期。非上場だからなし得た成果といえる。
こうした消去法の結果、サントリー食品に上場の白羽の矢が立ったのだが、内容的にも上場の条件を満たして余りあるものがあったといえる。それを大手証券関係者は「グローバルな事業基盤とブランド力があり、商品開発力の高さもグローバルで一級レベル。今後も高い成長力が期待できる」と説明している。
●避けて通れなかった上場
サントリー食品は、サントリーHDの中で国内外の飲料・食品事業を担う子会社。コーヒー飲料「ボス」や緑茶飲料「伊右衛門」など競争力の高いブランドを持ち、国内飲料シェアは約20%でコカ・コーラグループに次ぐ2位。
12年12月期の連結営業利益は584億円で、キリンビバレッジ(39億円)やアサヒグループHD飲料部門(102億円)を大きく上回る。サントリーHDにとっても、連結売上高の約50%と同営業利益の約70%を稼ぐ大黒柱的存在だ。
海外事業でも、サントリーHDのエンジン役になっている。
サントリーHDの海外売上高は、直近の12年12月期で3833億円。このうち、飲料・食品事業が約3300億円で、海外売上の86%も占めている。サントリー食品の傘下には、欧州でコカ・コーラと並ぶシェアとブランド力を持つオランジーナ、北米でペプシ系ボトラーのペプシ・ボトリング・ベンチャーズなどの強豪が名を連ねている。
これからの飲料・食品事業の成長を牽引する海外市場で、すでに地盤をしっかり固めているのだ。
同社はまた、昨年12月に15年12月期を最終年度とする中期経営計画(中計)を発表している。それによると、売上高9844億円、営業利益767億円が12年12月期の実績。これを売上高、EBITDA(営業利益、減価償却費、のれん償却費の合計)共に年平均5%のペースで伸ばし、最終年度に売上高1兆1396億円、EBITDA1556億円の目標を立てている。
市場が縮小傾向にある国内市場のみでこの数値目標を達成するのは、言うまでもなく不可能。同社は中計で「積極的なM&A戦略推進により、東南アジア、アフリカ、南米などの新興国市場で事業展開を加速させ」と、海外事業拡大を明示している。このための資金調達をする上でも、同社の上場は避けて通れなかったといえそうだ。
●上場により「やってみなはれ精神」に影が差す恐れも
一方、サントリーHD関係者は「挑戦し続ける社風を保持できるのが、非上場のメリット」と口を揃える。
創業者・鳥井信治郎の口癖だった「やってみなはれ精神」に社員たちが奮い立ち、利益追求は二の次で粘り強く頑張り続け、成果を生み出した製品は枚挙にいとまがない。
だが、株主の利益に配慮をしなければならないサントリー食品の上場は、こうしたサントリーHDの「やってみなはれ精神」に悪影響を及ぼしかねないというのだ。
そのリスクを、どのように回避するのか? “やってみなはれ上場”に挑むサントリーHDの今後に、注目が集まっている。
(文=福井晋/フリーライター)
直接金融市場から資金調達できる方法はないか。
そのひとつの回答が優良子会社の上場なのですね。
とはいえ、ここに挙がっているように、
この上場が利益追求は二の次で粘り強く頑張り続け、
数多くの成果を生み出してきた歴史と、少し逆行する向きもあるかもしれません。
そこをどう超克していくか、ますます目が話せませんね。
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サントリー、優良子会社の“異例でユニークな”上場の狙いと舞台裏…懸念の声も
http://biz-journal.jp/2013/07/post_2419.html
サントリーホールディングス(HD)といえば私企業の代表格。株式非上場が社是のような会社だ。そのサントリーHDが来る7月3日に、子会社のサントリー食品インターナショナルの株式を東証1部に上場する。
6月24日に決まった公募・売り出し価格は3100円で、上場時の時価総額は約1兆円に上り、食品業界3位のアサヒグループHDの約1兆2000億円に迫る。また昨年9月、国内最高額で東証1部に再上場した日本航空の上場時時価総額約7000億円も軽く超える。
株式市場では「今年最大の大型上場案件。業績も好調なので国内外から資金が集まり、市場が活性化する」(大手証券)など歓迎ムードが強い。
サントリー食品の上場はもちろん、直接金融市場からの資金調達が目的。そのサントリーHDが資金繰りに困っているわけではない。11年12月期まで7期連続で増収・増益を達成するなど、業績は堅調に推移しているからだ。
今回の上場の舞台裏を見ると、グローバル時代における私企業のしたたかな生き残り策が見えてくる。
●ままならぬ私企業の資金調達
サントリー食品の発表によると、募集株式数は9300万株。このうち、3350万株が国内募集、5950万株(全株の約64%)が海外募集。これに親会社のサントリーHDのサントリー食品株国内売り出し分2600万株が加わる。募集期間は6月25日から28日まで。なお、上場後のサントリーHDのサントリー食品持ち株比率は約60%になるとみられている。
発行価格1株3100円を基にした資金調達額はサントリー食品募集分2883億円、サントリーHDの売り出し分806億円の計3689億円。
サントリーHDは、このうち約3378億円を金融機関からの短期借入金(過去に実施した企業買収金用)の返済に充て、残りを今後の海外企業買収などの戦略投資に充てる模様。
「株式非上場が社是」とまで言われたサントリーHDが、それを自ら破るように株式上場の本格的な検討を始めたのは2008年といわれる。キリンHDが豪州乳業大手・デアリーファーマーズを約840億円(当時)で買収した時期と重なる。
当時のサントリー株式会社も08年にニュージーランドの清涼飲料大手・フルコアグループを約750億円(当時)で買収。翌09年も、持ち株会社に移行したサントリーHDが仏清涼飲料大手・オランジーナ・シュウェップスを約3000億円で買収している。
証券大手関係者によると、サントリーHDは11年も仏清涼飲料大手・ダノンのミネラルウォーター事業買収に動いたが、この時は資金不足で買収を断念したという。
海外事業の拡大につれ、従来の社債発行や銀行借り入れでは資金調達がままならなくなったのだ。
●私企業の自由さと資金調達難のジレンマ
こうした経緯から、サントリーHDの佐治信忠会長兼社長は、ついに株式上場を決意したといわれている。
その結果、サントリー食品の株式上場が決まったが、この上場計画が明らかになった当初、株式市場関係者の間では「なぜHDではなく食品なんだ」と、驚きの声が上がった。
市場では「親会社は上場するが子会社は上場しない」が半ば常識だからだ。実際、東証で「親会社が非上場で子会社が上場」のケースはわずか24件。全体の約1%にすぎない。しかも、その大半は時価総額が100億円未満。サントリーHDのような大企業のケースは極めて異例といえる。
この型破りな上場計画は「ユニークなサントリーらしい」(市場関係者)といえばそれまでだが、そこには「サントリーらしい私企業の生き残り策がある」(業界関係者)と見るのが的確なようだ。
つまり「私企業の経営の自由度を守りつつ、直接金融市場から資金調達できる方法はないか」と考え、導き出した解がサントリー食品の上場といえる。
サントリーHDの株式の約90%は、創業家(鳥井家と佐治家)が保有している。もし、親会社のサントリーHDが上場すれば、創業家が保有株の一部を市場に放出するか新株を発行するかになり、いずれの場合も創業家の持ち株比率が下がってしまう。創業家の支配力を保持するためには、サントリーHDの上場ははなからあり得ない相談だった。
ではサントリー食品と並ぶ中核子会社の「サントリー酒類」が上場対象にならなかったのかとの疑問が浮かぶが、それは「祖業を担う子会社」であることから除外されたようだ。
サントリーHDの祖業であるウイスキー醸造は、原料仕込みから出荷まで10年以上の歳月を要する。したがって「四半期単位で業績が問われる昨今に、サントリー酒類の上場は問題外」(サントリーHD関係者)になる。
63年に参入したビール事業が初めて黒字になったのは、参入から46年目の08年12月期。非上場だからなし得た成果といえる。
こうした消去法の結果、サントリー食品に上場の白羽の矢が立ったのだが、内容的にも上場の条件を満たして余りあるものがあったといえる。それを大手証券関係者は「グローバルな事業基盤とブランド力があり、商品開発力の高さもグローバルで一級レベル。今後も高い成長力が期待できる」と説明している。
●避けて通れなかった上場
サントリー食品は、サントリーHDの中で国内外の飲料・食品事業を担う子会社。コーヒー飲料「ボス」や緑茶飲料「伊右衛門」など競争力の高いブランドを持ち、国内飲料シェアは約20%でコカ・コーラグループに次ぐ2位。
12年12月期の連結営業利益は584億円で、キリンビバレッジ(39億円)やアサヒグループHD飲料部門(102億円)を大きく上回る。サントリーHDにとっても、連結売上高の約50%と同営業利益の約70%を稼ぐ大黒柱的存在だ。
海外事業でも、サントリーHDのエンジン役になっている。
サントリーHDの海外売上高は、直近の12年12月期で3833億円。このうち、飲料・食品事業が約3300億円で、海外売上の86%も占めている。サントリー食品の傘下には、欧州でコカ・コーラと並ぶシェアとブランド力を持つオランジーナ、北米でペプシ系ボトラーのペプシ・ボトリング・ベンチャーズなどの強豪が名を連ねている。
これからの飲料・食品事業の成長を牽引する海外市場で、すでに地盤をしっかり固めているのだ。
同社はまた、昨年12月に15年12月期を最終年度とする中期経営計画(中計)を発表している。それによると、売上高9844億円、営業利益767億円が12年12月期の実績。これを売上高、EBITDA(営業利益、減価償却費、のれん償却費の合計)共に年平均5%のペースで伸ばし、最終年度に売上高1兆1396億円、EBITDA1556億円の目標を立てている。
市場が縮小傾向にある国内市場のみでこの数値目標を達成するのは、言うまでもなく不可能。同社は中計で「積極的なM&A戦略推進により、東南アジア、アフリカ、南米などの新興国市場で事業展開を加速させ」と、海外事業拡大を明示している。このための資金調達をする上でも、同社の上場は避けて通れなかったといえそうだ。
●上場により「やってみなはれ精神」に影が差す恐れも
一方、サントリーHD関係者は「挑戦し続ける社風を保持できるのが、非上場のメリット」と口を揃える。
創業者・鳥井信治郎の口癖だった「やってみなはれ精神」に社員たちが奮い立ち、利益追求は二の次で粘り強く頑張り続け、成果を生み出した製品は枚挙にいとまがない。
だが、株主の利益に配慮をしなければならないサントリー食品の上場は、こうしたサントリーHDの「やってみなはれ精神」に悪影響を及ぼしかねないというのだ。
そのリスクを、どのように回避するのか? “やってみなはれ上場”に挑むサントリーHDの今後に、注目が集まっている。
(文=福井晋/フリーライター)
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